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東京地方裁判所 平成8年(行ウ)277号 判決

原告

久野貞夫(X)

被告

東京都固定資産評価審査委員会(Y)

右代表者委員長

森田重夫

右訴訟代理人弁護士

川上俊宏

右指定代理人

高山猛

田中敏夫

藤田芳子

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  本訴訟の審理の対象となるのは、本件決定が是認した本件各土地の登録価格が法三四九条一項に規定する「価格」すなわち法三四一条五号に規定する「適正な時価」であるかどうかであるところ、資産の所有という事実に着目して課税される財産税であるという固定資産税の性質、適正な「時価」という文言の意義に照らして、「適正な時価」とは、基準年度の賦課期日(本件においては平成六年一月一日。)において正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値(以下「客観的時価」という。)をいうものと解すべきである。この点、被告は、平成四年七月一日の標準宅地の鑑定評価価格を基礎として平成五年一月一日における評価額を求め、その七割程度の額をもって路線価を決定し、これを算定の基礎としているが、右に説示したとおり、「適正な時価」は、平成六年一月一日の客観的時価と解すべきであるから、被告の算定した登録価格の適否は、平成六年一月一日における客観的時価との対比において検討されることとなる。

二  また、法は、大量の土地について反復・継続的に実施される固定資産の評価を可及的に適正に行い、統一的な基準による評価を行うことによって、各市町村全体の評価の均衡を確保するとともに、評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消するため、固定資産の評価方法を自治大臣の定める評価基準によらしめることとしている。

もっとも、評価基準等は、各筆の土地を個別評価することなく、個別鑑定に準じた方法で標準宅地の客観的時価を算定し、価格形成要因の主要なものについての補正等を加えて、対象土地の価格を比準評定するものであり、土地の価格に影響を及ぼすべきすべての事項を網羅するものではなく、大量的、画一的な評価手法により客観的時価へ接近する方法であるから、具体的土地の評価として評価基準等による評定方法の一部が妥当性を欠くことも予想されるが、この場合でも、その評定方法によって得られた結果が客観的時価を超えないときは、なお適正な時価というを妨げないというべきである。

しかし、「適正な時価」とは本来客観的に観念されるべき事項であって、法が自治大臣の策定する評価基準に委任したものは「適正な時価」を評価するための基準、方法及び手続であるから、評価基準等に従った評価でも、客観的時価を上回る場合には、その限度において、登録価格は法に違反するものというべきである。

三  本件で採用された評価法は、いわゆる路線価方式による評価法であるが、路線価方式は、大量の宅地を短期間に相互の均衡を考慮しながら評価する方法として使用することができるものと一般に解されており、評価基準において路線価方式を採用したことには合理性があるということができる。

また、評価基準等は、市街地宅地評価法における各街路の路線価を売買実例価額を基礎として、宅地の利用上の便等及び各街路の路線価の均衡等を総合的に考慮して決める旨定めているが、このような定めは鑑定評価理論と矛盾するものではなく、本件においては主要街路からその他の街路への比準に当たって適用された基準もその考慮要素、補正割合において一般的に合理的なものと推認することができ、また、弁論の全趣旨によれば、取扱要領による奥行価格補正の方式も客観的時価への接近の方法としても合理性を有するものといえる。

したがって、評価基準等における市街地宅地評価法は本件各土地の「適正な時価」へ接近するための合理的な方法であると推認することができる。

四  〔証拠略〕並びに被告主張の本件各登録価格の算定過程に照らせば、本件各登録価格の算定の基礎となった標準宅地の価格の算定方式は、評価基準等に準拠してされていることが認められる。

また、〔証拠略〕によれば、本件各標準宅地の価格は、平成五年一月一日における価格として適正に評価されていることが推認され、これを覆すに足りる証拠はない。そして、地価公示法により一般に公示又は公表された東京都練馬区内に所在する地価公示地(住宅地)の平成五年一月一日及び平成六年一月一日の各公示地価(公知の事実である。ただし、両時点において、いずれも地価が公示又は公表されていたものに限る。)を比較した場合、右期間における各地価公示地の公示価格の下落率が一・二パーセントから一三・一パーセントの範囲内にあったことは当裁判所に顕著であり、右事実に照らせば、同区の住宅地に所在する本件各土地については右期間に三〇パーセント以上の価格下落はなかったものと推認されるから、平成五年一月一日における評価基準に従った価格の約七割に相当する価格とされた各標準宅地の価格及びこれに基づく各路線価は、いずれも平成六年一月一日における「適正な時価」を超えるものではないと推認することができ、右推認を覆すに足りる証拠はない。

以上説示したところによれば、本件各登録価格の決定は適法なものということができ、原告の主張する前記第二、三2(一)及び(二)の点は、右判断を左右するものではない。

五  原告のその余の主張も、次のとおり、右判断を左右するものではない。

(一)  〔証拠略〕によれば、被告が本件土地一の評価に当たって採用した袋地に係る補正は、鑑定評価上、一般的に合理性を有するものと認めることができる。また、評価基準等はその評定の全手続を通じて客観的時価に接近する方法であるから、一般的に妥当とされる補正率の一部に具体的妥当性を欠くものがあったとしても、評価基準等を適用して得られた価格が客観的時価の範囲内にある限り、評価の違法を招来しないことは既に説示したとおりである。

また、本件土地二の評価に当たって採用した格差率についても、これを不当とすべき事情は認められず、本件土地二に関して原告が主張する路線価をもって適正であると認める事情は認められない。

よって、原告の主張する前記第二、三2(三)(1)及び(2)の主張は採用できない。

(二)  標準宅地の鑑定評価における補正は、当該鑑定の基礎とされた資料との対比において、標準宅地の価格を鑑定するためにされるものであり、他方、対象土地の評価額の決定における補正は標準宅地の価格から設けられた路線価を適用する上で、標準宅地との対比における補正を行うものであって、重複評価には当たらない。

よって、原告の主張する前記第二、三2(四)の主張は採用できない。

(三)  本件の審判の対象は、本件各土地に係る登録価格が評価基準等に適合し、かつ、客観的時価以内の価格であるか否かであって、税額の当否ではないから、定期預金金利との対比は、本件決定の違法事由となるものではない。

よって、原告の主張する前記第二、三2(五)の主張は採用できない。

(裁判長裁判官 富越和厚 裁判官 團藤丈士 水谷里枝子)

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